家づくりも順調に進んでくると、私は工事中の家の中に入って確認したいことがたくさんありました。
たとえば、断熱材の使用量や筋交いの入り方などです。
これらは一度壁で塞いでしまうと、後からは見えなくなってしまいますので、基礎工事と同じように、施工中を見れる注文住宅の特権です。
私はいつも現場に足を運ぶと、
「工事の邪魔なんじゃないかな?」 とか、
「私は職人さんたちが手抜きしないかどうか見張っている→信用していない」
と思われているんじゃないか?と思っていたのですが、案外そうではありませんでした。
むしろ、事業主のT社長などは、
「リックルハングさん、見てくださいよ。この筋交い。ダブル筋交いですよ。最近の耐震偽装もこともありますし、リックルハングさんの地震体験もお聞きしてます。強い家の本質を実際に見てもらえて私らビルダーとしてもうれしいです。」
「ははは・・(相変わらず家を語るとアツいな。。。)なんだかよく分かりませんが、強いんですね
」
「そりゃもう、普通の構造だとここまでやる必要ありませんけど、ウチは設計のT先生が絶対こうしなさいって言うから。。。」
「そうなんですか
」
「建売だといくらダブル筋交いにして、通常の構造計算より強くしていますってアピールしても、もう壁で塞いでいます。壁の見た目は普通の筋交いでも、ダブルでも変わりませんから、お施主さんは「あ〜そうですか・・・」って興味ないんですよね。一番力入れてるところ何ですけど・・・それよりもこのキッチンいいですねってなっちゃうんです。」
「なるほど、分かる気がします
」
「だから建売業者は構造に力を入れず、建物の値段の割には豪華な仕様の設備を入れるんです。その方がお客さんにウケますし、何といっても売れますから。」
「業者のいう、”売れる家”は必ずしも”いい家”に結びつきませんね
」
「売れる家はヤバいですよ。耐震偽装なんかで問題になっている物件は、すべて価格も手頃で、すぐに売れてしまった、いわゆる売れる物件です。」
「豪華な設備に踊らされて、家づくりの本質を見抜けなければ、本末転倒ですね?
」
「そうです。リックルハングさん、この家は価格のわりに設備は普通です。でも構造は抜群にいいですよ。安心して住んで頂けます。そこを見てもらえて、分かってもらえるお施主さんなんで、ヤリガイありますっ!」
この辺の価値観が共感できるので、T社長と組んで良かったと思います。
また、T社長も私をそう思ってくれているのは、何よりもうれしいことです。
T社長は家の隅々まで私に見てほしいのか?
よっぽど自信があるのか?
私を信用し切っているのか?
それとも実はあまり深く考えていないのか?
私に工事をやっていない時でも自由に家の中に入ってもらえるようにと、工事用のカギの保管場所と暗証番号を教えてくれました。
これは助かりました。
やはり日頃は職人さん達が忙しく作業していますので、あまりウロウロすると邪魔になります。
カギがあれば休日にゆっくりと工事の進捗を確認したり、写真を撮ったりできます。
子供や妻に工事状況を見せることもできます。
普通のHMさんで建てた場合も、こんな感じで勝手に入れるのかなぁ?

立地を最優先する私の家づくり。その場所は、もちろん駅近の住宅密集地域です。
高層マンションでもない限り、『眺望』とか『景色』とか、そんなものにはまったく縁がないエリアです。
ところが目の前の公園のおかげで、思っても見なかった素敵な眺望が手に入ることが分かりました。
人間、諦めていたものでも、手に入るかもしれないと思うと、つい欲が出てしまいます。
六甲の山並みを臨む、この眺望を活かすために、私は家の仕様変更を申し入れました。
以前(成金化してはいけない)にも述べましたが、売却で思わぬ予算修正が可能になったため、その予算の多くをこの眺望のための仕様変更に費やしました。
この眺望に面したバルコニーの腰壁の変更です。
バルコニーが完成すると、腰壁のせいで、立たないと景色が見えなくなります。
リビングで寝そべっている時や、ソファでくつろいでいる時にも、この景色を楽しむには、腰壁が無くすか、ただの手すりだけにするのが一番。
しかし、それでは小さい子供のいる我が家では、危なくて子供をバルコニーに出せません。
そこで、バルコニーの腰壁をアクリルパネルを使った光を通すタイプのものに変更しました。最近はマンションのバルコニーなどでよく見られるものです。
この仕様変更には当初50万円以上のコストアップとなり、諦めようかどうかの瀬戸際に立っていると、事業主T社長が、
「いいモノ見つけました!」
と、違うメーカーで同様の商品を見つけてきてくれました。
かるく30万円以上かかりますが、私もT社長も、この眺望を活かすためには何とか実現させたいと取り組み、導入することができました。
この選択は私の家づくりの選択枝の中で、最も大きなコストアップとなりましたが、今や我が家のシンボルとして、家の外観デザインにも一役買っており、大きな満足を得る選択のひとつとすることができました。

家の工事は順調に進み、各階の床貼りが出来上がった頃、簡単な設備打ち合わせを兼ねて、事業主T社長と、設計のY先生、監督のSさんら、我がチームが集合しました。
「今日は床貼りが終わってますので、家の中に入られますか?」
T社長からの申し出です。
「ハイ、もちろん!!」
「階段はまだありませんので、ハシゴになります。くれぐれも気を付けて下さい。万が一ケガされても保険ききませんので・・・」
「ハ、ハイ。。。分かりました
」
家の中は1階は何度か外から見てますが、2階、3階は始めてです。
工事中の棟梁は黙々と作業しています。
こっちをチラっと見て、軽く会釈され、引き続き作業しています。
工事の邪魔をしないように、慎重にハシゴを上り2階へ。
2階はメインの生活空間LDKです。
「おおぉ、広いじゃないかっ!
」
が第一感想でしたが、すぐにその広さよりも、もっと他のものに目を奪われます。
これまで穴が開くほど眺めてきた家の図面ですが、その二次元の世界では、想像できなかったものに気付きました。
私と同様、T社長、Y先生もすぐにそのことに気付き、3人で同じようにその光景を眺めました。
2階から見えるその眺望の素晴らしさ・・・
「いい眺めでしょ!」
現場監督のSさんが後ろから声をかけます。
私の芦屋の家は、芦屋で最も有名な超高級住宅街”六麓荘”のように、六甲山の麓から街並みを眺望できるようなロケーションではありません。
妻が車に乗りませんので、そのような山の手住宅では生活できません。
いわゆる都市部であり、駅近の住宅地密集エリアです。
この地域では『眺望』などという贅沢な欲求は、必然的に施主の頭からは消えています。
窓から見えるのはもちろん、接近する隣の家。
景色を楽しむエリアではないのです。
私は生まれも育ちも、このような都市部の住宅密集地域で育ってきましたので、眺望のない生活を苦にもしませんでしたし、望みもしませんでした。
実際、神戸本山の前の家も、窓から見えるものは、隣のマンションの壁と、反対隣の家のベランダでした。
ですから、掃除の時以外にまず窓を開けることはありませんでしたし、外の景色を眺めながらくつろぐといったことは、一切ありえませんでした。
今建築中の芦屋の家、住宅密集地域でありながら北面の一面だけが、目の前が公園のおかげで、六甲山までの視界が広く開けているのでした。
2階に上がって初めて気付きました。
T社長、Y先生も、いい眺めになるとは予想していたようですが、ここまで視界が開けているとは思っていなかったようで、「これはイイ」 を連呼します。
二次元の図面の世界では気付かなかった、眺望という立面の世界。
家の中を見るのも忘れて、すっかり窓から見える景色を楽しんでしまいました。
この眺望、3階はさらに視界が開けました。
「すっ、スバらしい・・・」
この眺望を見て、私はほとんど決まっている家の仕様に少し手を加えたくなってきました。
この眺望をフルに活かす家にしたい!!
この欲求が非常に強くなったのです。
もちろん、T社長もY先生も、監督のSさんもその意見には大賛成。
「予算が許す範囲で、ぜひそうするべき!」
と、仕様変更を嫌な顔ひとつせず、むしろ喜んでくれました。
つづく

私の考える、家の外観を損なう最も大きな要因・・・・・前回の続きです。
それは・・・
電線の引き込みです。
自分の家の前の電柱から、ダら〜んと伸びる電線。
家の目立たないところから引き込めるといいのですが、ほとんどの場合は道に面した、家の顔とも言える場所から家の中に引き込まれます。
そりゃそうです。
通常は道路にしか電柱は無くて、そこから引き込むのですから・・・
空調や、レンジフード、物干しなど、せっかく建築設計で配慮してもらっても、最もシンプルに仕上げたい、人の目に当たる側の面、つまり道路に面した部分から、電線がニョロ〜っと伸びていては、私の求めるシンプル外観は台無しです。
そもそも電柱、電線の多い街並みは、街が美しく見えません。
高圧送電線なんかが近くにあると、せっかくのロケーションも台無しです
生活必需品であるライフラインではありますが、できれば見えない方がうれしいものです。
皆さまの家でも、
「くそ〜、この電柱、電線さえなければ・・・」
って、結構思ってらっしゃるんじゃないでしょうか?
私は以前にも述べましたが、この街を気に入った一番の理由は、美しい公園と、電柱の無い素敵な街並みでした。
この街では震災後の区画整理のおかげで、電気や通信インフラは地中埋設なのです。
郊外の新興住宅地ではよく見かけますが、この地域の都市部住宅地では珍しいでしょう。
我が家ももちろん、電気は地中引き込みにしました。
通信インフラもすべて地中からの引き込みです。
電柱から引き込まれているものは一切ありません。
電力会社は関西電力以外に選ぶ余地がありませんでしたが、通信インフラ(電話・ネット、テレビ)はたくさんの選択枝があります。
私はテレビアンテナも、家のシンプルな外観を大きく阻害すると思っていましたので、ケーブルテレビを引くことにしました。
もちろん地中引き込みです。
このケーブルテレビで電話もネットもできるハズなので、ケーブルTV会社に申し入れたところ、地中のインフラはテレビだけで、電話・NETは電柱からの引き込みになるとのこと
もちろん即刻、却下。「じゃ、テレビだけで結構です。」
ですので、電話とNETは値段の安かった、KDDIに頼もうとしましたが、KDDIも
「地中引き込みになるかどうかは分からない」 ですと。。。
結局、確実に地中から引き込み可能と断言した、NTTにお願いすることになりました。
電気、電話の線を地中引き込みにこだわったため、結構労力を使うはめになりましたが、それでも電柱からの引き込みによって、家の外観を損なわれるのを防ぐことに成功したことは大きな満足を得ることができました。



我が家の家づくりは順調に進み始めました。
ここまで来れば、私が細かな要望を出す次元ではなくなっています。
しかし工事中でも、どうしても譲れないこだわりの部分がありました。
この家づくりで私が事業主T社長、設計Y先生、工事のS監督を巻き込み、徹底的にこだわり抜いたことを少し紹介します。
こだわり抜いた点とは、端的に言いますと、
「外観のシンプルさ」
です。
我が家は前にも申しましたが、公園に面しております。
地域の憩いの公園であり、遠くからも多くの人が足を運んできます。
そして公園の周辺の家やこの地域の街並みは、どの家も趣向は違えど、美しく見栄えのする家、おしゃれでセンスのいい家がほとんどです。
私の家は小さく、間口も狭いので見栄えはしませんが、この公園に面する以上は、この街並みに恥じない家にすることに強いこだわりを持ちました。
「ここの街並みって、すごいおしゃれなんだけど、あの家の雰囲気が少し台無しにしてる感じだなぁ。」
なんてことは避けなくてはなりません。
私は「街並み」をとても重要視します。
いくら自分の家がおしゃれで、カッコよくても、街並みしだいではその家の価値は一気に減少するでしょう。
逆に、大しておしゃれではないのですが、シンプルでこじんまりした家でも、素敵な街並みの中に入ってしまえば、何となくセンスのいい家に見える・・・
スーパーの婦人服売り場で、おしゃれに着飾った店員よりも、エルメスのショップの普通の店員の方が、カッコよく見えるのと同じ心理です。
私はこの、
「シンプルでこじんまりした家であれば、素敵な街並みの中に入ってしまえば、何となくセンスのいい家に見える」
を目指しました。
その為には外観をとことんシンプルにすることに徹底的にこだわります。
そして、そのチェックは近くから家をチェックするのではなく、できるだけ遠くから我が家を眺めたり、公園のベンチから見える我が家の姿をとことん確認しました。
いかに街並みにとけ込んでいるか?
これが最大のチェックポイントです。
では外観をシンプルにするために、どういう点を工夫したのか?
一つはエアコンの室外機の置場と配管の見え方です。
できるだけ公園に面するところには室外機を置かないように工夫しました。
エアコンの室外機は家の外観を大きく損ないます。
室外機もそうですが、配管もしかりです。
家づくりでは一般的に、空調設備は別工事になることがほとんどとお聞きします。
そのため、家の壁面や屋根にエアコンの室外機が取り付けられ、配管もあちらこちらに張り廻らされ、家のデザイン性を損なっている家をよく見ます。
設計者がエアコンのことまで考えて外観を設計するケースはほとんど無いというから、無理もありません。
私は外観のシンプルさ追求の為、「エアコンの室外機・配管が公園から見えない」ことにこだわり、設計Y先生に最初から注文を出していました。
そしてY先生のすばらしいアイデアでその問題をクリアできました。
家の外観を損なうもの、他にもあります。
「樋」、「換気口特にレンジフード」・・・
まだありますね。
「物干しベランダ」もそうです。
どれも生活には欠かせないものばかり。無くすわけにはいきません。
これらはどのように解決すればいいのでしょう??
つづく


上棟式が終わってから、一緒に参加してくれた私の母がこんなことを言いました。
上棟式始まる前に、家の前で待っていると、ご近所の方か、通りがかりの方かわかりませんが、オバさんが話かけてきたそうです。
「今日、上棟ですか?目の前は、このキレイな公園だし、いいところで建てられますね。」
「ありがとうございます。でも私らじゃなくて、息子たちの家なんです。
」
「あら、そうですか?お若いのにご立派ですね。ご子息は何かご商売でも??」
「いえいえ、普通のサラリーマンですよ。
」
「あらそうですか。・・・・・でも、親御さんも大変ですね。」
「・・・?、はあ。。。
」
私の家は目の前がすぐ公園です。
とても美しい公園で、私は公園のあるこの街並みに惚れて、この地を選びました。
上棟式の最中も、公園に遊びに来た多くの人が、我が家の上棟を横目で見ていました。
そこで私の母は見知らぬオバさんに話かけられました。
最初は私の両親が住む家と間違えられたようです。
無理もありません。
私の家のご近所はほとんどの方が私の親の世代です。
もうリタイアしてる方も多くいらっしゃいます。
元々、家の価格帯からして、私たちのような30代前半の子育て世代が入れる街ではないのです。
中には同年代の方もいらっしゃいますが、どう見てもサラリーマンではありません。
その家にはポルシェがとまっており、毎朝カジュアルな格好で、それを運転して出て行かれます。
この家の近所では、毎朝決まった時間にスーツに身をくるんだサラリ−マンのよくある通勤風景は、ほとんど見かけません。
皆、何をやっている方かも良く分かりませんが。。。
次に、私の母が「普通のサラリーマンの息子の家です。」と言うと、
「親御さんも大変ですね。」と来たようです。
そうです。
そのオバさんは、私の両親がこの家のスポンサーと思っているようです。
つまり、冴えないサラリーマンの息子夫婦のために、裕福な親が家を買ってあげた。もしくは援助してあげたと。
確かに上棟式の様子を傍目から見ると、その構図の捕らえ方は一般的かも知れません。
私たち夫婦は二人ともかなり童顔ですので、年齢より若く見られることがほとんどです。
おそらく20代後半で見られているでしょう。
「若い普通のサラリーマンが芦屋のこんな場所に、注文住宅を建てる(建てられる)ハズがない。おそらくあの親は裕福で、息子さんはお坊ちゃんだろう。」
正直なところ、何人かに同じ場面を見せると、そう思われる人の方が多いと思います。
私の母はそう思われて、気持ちよかったそうです。
「おほほっ、そうですのよ。ドラ息子にはお金がかかりますわぁ。」なんて演じていたのでしょう。
私は別にまわりの人にどう思われていても構わないと思っています。
逆に大借金して、無理して買いましたと言うより、
「あはは、ウチは親が金持ちなんで、助けてもらったんですよ。いいでしょ〜!
」
の方が、スマートでカッコいいなと思うくらいです。
自分の家くらい、当然、自分で建てます。
だから色んなこと勉強して、試して、実践するんです。
当然愛着は全然違いますよね。

前回の続き。
久しぶりのチーム「リックルハング邸新築工事」のメンバー集結。今日は上棟です。
朝から上棟の様子を見学した私。
今までの家づくりイメージは、平面図とニラメッコによる二次元のイメージでした。
それが今日、初めて立体(三次元)となりました。
直感的に思ったことは、
「予想より家が大きい・・・
」
基礎工事の完成の時とは、真逆の感想です。
立体になると、思ったよりデカイ。
そして、建物の形・デザインは私の描いていたものとピッタリでした。
嬉しさでワクワクが抑えられません。
これからの工事進捗が楽しみでなりませんでした。
その工事を担って頂く、棟梁をはじめとした職人さん。
少しでも仲良くなれるよう上棟式ではコミュニケーションを取るつもりです。
そして、いよいよ上棟式。
まだ自分の家という実感がまったくない私は、家に入るのに妙な緊張を覚えます。
私と棟梁が、お酒を家の柱にかけ、工事の安全を祈願しました。
そこからはただの飲み会。
組み上がったばかりの家に、簡単なテーブルを用意して宴席が組まれました。
座布団は床下に敷き詰める断熱材です。
T社長はお寿司を用意してくれていました。
缶ビールと日本酒で乾杯です。
さすがに職人さんは底無しの様子。皆さんどんどん飲みます。
しかし、棟梁は飲まない人らしく、寡黙にお寿司を頬張っています。
この棟梁、無口でいかにも職人一筋って感じです。
少し怖い目線が、職人キャリアを物語り、高倉健を思い起こさせます。
話かけるのは、とても緊張しました。
何たって、自分の親ほどの歳ですし、頑固そうなその表情。
私のような若造が、施主だからと言っても気安く近寄り難い雰囲気をかもし出していましたから。。。
でも思い切って声をかけました。上棟式はそれが目的なのですから。
ここで棟梁をはじめとした、職人さん達に、
「あの若い施主、なかなかしっかりしとるな。よっしゃ、アイツが住む家やな。んで、あれが奥さんで、子供はあの子か。奥さんおなか大きいみたいやから、子供もう一人増えるんやな。よっしゃ、任せとけ、ええ家つくったる!」
と思ってもらえるようになるのが、今日からの施主としての私の仕事。
その為にも、棟梁とたくさん話そう。
思い切って棟梁に話かけてみると、以外や以外、この棟梁、腰が低く、私のような若造に、
「よろしくお願いします。」
と深々と頭を下げるではありませんか。
私も負けじと、さらに深く頭を下げ、
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
と言って、事業主T社長から頂いたご祝儀袋を手渡しました。
(棟梁)「おーい、みんなご祝儀頂戴したぞ!!」
(職人さんたち)「ありがとー、ございまーす!!」
棟梁はほとんど無口で、会話は最低限でしたが、私としては十分に満足なひとときでした。
そして宴席の最後に施主から一言ということで、
震災を経験して、家というものに強い執着を持ったこと、ここにたどりつくまで長かったことなど、家づくりにかける想いを述べ、我が家はこの家の完成を、とてもとても楽しみにしていることを素直に伝えました。
最後に危険でキツい仕事に従事される、職人さんたちの健康と安全を心からお祈りする旨を伝え、おひらきとしました。

事業主T社長から電話が入りました。
「予定通り、○日に上棟式を行いますので、よろしくお願いします。何名様で来られる予定ですか?」
「ウチの家族だけですので、3人ですが」
「おめでたい席ですので、ご両親様や親しいご友人も呼んで頂いて構いませんよ。」
「そういうもんなんですか???分かりました。人数決めて連絡させて頂きます。」
「宴席やご祝儀含めまして、約束通り私どもで用意させて頂きますので、ご安心下さい。」
「・・・・・あっ、そうだったな。。。私が無理言ってお願いしたんだった(工事請負契約締結)。でもこれって今改めて考えると、ご祝儀なんてどう考えても施主が用意するような気がするな。。。ちょっとデリカシーなかったな。反省・・・」
T社長には違うところで必ず恩返しを考えよう、そう心に決めました。
そして上棟の日。
せっかくの上棟式ということで、家の近い、私の両親にも来てもらうことにしました。
その日私は仕事はあらかじめ休みをとっており、朝から現場を見に行くことができました。
現場につくと、とても大きなクレーン車が横付けされ、骨組みとなる木材を吊り上げています。そして職人さんたちの手でどんどん家が組み上げられていきます。
芦屋は高い建物の建築規制が厳しいので、クレーンの高さが周囲からも目を引きます。
一見、ビルでも建てているのか??という感じ。
基礎工事ではあまりピンときませんでしたが、この大掛かりな上棟の工事を目の当たりにして、
「あ〜、私はすごいモノに手を出してしまったんだ・・・」
と、一抹の不安さえ感じてしまいました。
その後、お昼を挟み、夕刻になる頃にはすっかり家らしい骨格が出来上がりました。
そして、続々とチーム「リックルハング邸新築工事」のメンバーが集結してきます。
事業主のT社長
設計のY先生
監督のSさんは、朝からずっと居ます。
妻と娘
そして、私の両親も駆けつけました。
組み上がったばかりの家の中で、無事上棟式を迎えることができそうです。
つづく




家づくりをスタートすると誰もが経験すると思うのですが、何千万という買い物をしますので、細かな金銭感覚が麻痺してきます。
いつも10円単位の違いをチェックして買い物に勤しむ奥サマも、家づくりにおいては十万円単位の予算アップも簡単にOKしてしまいます。
「全体の金額から見れば微々たるもんだ
」
「この際せっかくだから・・・
」
と細かい何万、何十万の仕様追加をどんどんと積み上げ、フタを開けてみれば、
「仕様追加の合計は、200万円です。」
みたいなことは、そこらじゅうでお聞きします。
私も同様に金銭感覚が狂ってきましたので、売却が決まり資金繰りの全体像が見えた今、仕様追加になるものや、不動産屋、事業主に払うお金以外でどんなものがあるか、細かなモノまで全て書き出し、
追加費用の上限を固定化させることに努めました。
「物干しベランダの屋根追加=20万円」
「カーテン=10万円」
「エアコン移設、洗浄=15万円」
「引越し=8万円」
などの大物はもちろん、
「パソコンプリンター買い替え=2万円」
「ご近所挨拶用の菓子折り=1000円×9コ=9000円」
「お風呂のイス、洗面器買い替え=1200円」
「ベランダ用スリッパ=500円」
などなど、そこまで書く?みたいな細かいものも、考えられるものは全て書き出しました。
そこまでしないと追加費用は無限大に膨らみますし、全体の資金計画が立てられません。
大きな買い物をする(大きなお金を動かす)ときほど、細かなお金には気を配る必要があるのです。逆に言えば、
小さなお金をマネジメントできない人は、大きなお金を動かせないということです。
常に敏感な金銭感覚を養っておくことが、家づくりの資金計画、しいては生活設計(ライフプラン)においては大切なことなのです。

家の売却額が確定したことで、私の芦屋の家づくりの資金繰りがハッキリしました。
売却がまさかの金額で決まりましたので、一気に資金繰りがラクになったのは言うまでもありません。
2580万円の売却に対して、仲介手数料など諸費用で80万円ほど引かれ、2500万円が手元に入る予定になります。
そして、家の引渡し時点でのローン残債は1800万円弱ですから、700万円は手元に残すことができそうです。
ここに来て700万、ありがたすぎるほどの資金です
芦屋の新居はすでに大幅な予算オーバーで、バリューエンジニアリング(VE)を繰り返し、仕様も何度も見直して予算圧縮に努めてきましたので、この資金は何事にも変え難い喜びでした。
私はこの700万円という大金を見据えて、新居の資金計画を見直すことにしました。
700万のうち、まず100万をどうしても妥協した感のあった家の仕様で、自分なりに不本意であったものを見直すための財布にしました。
そして、さらに100万は新居での余裕資金として手元に置き、不要と判断すればすぐに繰上返済の資金とするようにしました。
残りの500万はローンの借入れを減らすため、頭金とすることにしました。
手元に思いがけない資金ができたからと言って、家の仕様UPには使わず、借入れを減らすことに重きを置いたのでした。
今回の700万は元々無かったものとして、資金計画を立てていましたので、そこで成金化するのではなく、我が家は変動金利での住宅ローンを選択しましたので、少しでも借金を減らし、将来の金利上昇リスクの影響を少なくするように努めました。
しかしそれでも、100万円分は家の仕様UPに使うことができます。
これまで予算圧縮にのみ知恵を絞ってきた私にとって、仕様UPの選択枝を持てるなんて考えてもいなかったので、少し躊躇しました。
節約ばかりしてきた人間が、贅沢すると何かしらバチが当たるような不安を感じる気持ちです
売却できるかどうかのストレスから解放され、尚且つ極限の予算状態からも解き放たれました。
率直に、この資金的余裕は心理的余裕に直結します。
この資金的余裕が心理的余裕を生み、これまで以上に私の今後の家づくりを、楽しく、ワクワクさせるものにしたことは間違いないでしょう。

家の売却契約が無事済みました。
一息ついた後、改めて『売却額2580万円』について考えました。
私は「高く売れた」と思っていますが、実際はどうなのでしょう?
築3年の中古戸建として3000万円で購入して、7年間住みました。
そして2580万円で売却。
7年間で420万円の価格下落ということになります。
購入時や売却時には、仲介手数料や登記費用、ローン諸費用など、いわゆる諸経費を払っています。それらの合計約300万円。
この家は420万円と300万円で、合計720万円が7年間でかかった費用ということになります。
7年で720万円ですから、1年で約100万円です。
月に直すと、8〜9万円。
狭いとはいえ、駐車場付きで、犬も飼えて家賃8〜9万円は、私の住むこの地域ではまずあり得ないでしょう。
賃貸の場合は敷金・礼金もあります。(戸建の敷金・礼金はかなり高い)
賃貸に7年間入っていたことを考えると、いい買い物だったと考えられますし、やはり高く売れたんだと実感します。
私は自分の7年前の選択が決して誤りではなかったことを喜ぶとともに、マイホームを投資という観点で捉えるように考え始めました。
新居はまだ基礎工事の段階なのですが、芦屋の家の投資対象としてのポテンシャルにも興味を持ち出したのはこの頃からでした。


いよいよ神戸本山の家の売買契約の日を迎えました。
売主の私と、買主のSさん、仲介担当のK氏の3人で粛々と契約が進められます。
K氏が段取りよく説明をしていくのを、Sさんは前のめりで聞き込んでいます。
そして、ところどころでスルドく質問をされます。
どうして、どうして、この方、決して奥様任せではなく、しっかりと勉強してきているじゃないですか?
私はこのSさん家族をひと時でも「衝動買い」と感じた自分を恥じました。
資金計画には「どうなのかな?」という疑問を持たざるを得ませんが、よく考えた末の決断であったことが、契約に臨むその姿勢から窺えます。
と同時に私自身もホッとしました。
もし衝動買いなら、ある日気が変わって
「やっぱり契約撤回します。手付金は放棄します。」
と安い手付金を手放して、解約される可能性があるからです。
もしそうなったら、また一から売却活動です。
売却はタイミングが命ですので、解約の時期によっては手付金をもらったとしても、私としては大きな損害を被る可能性があります。
よ〜く考え抜いた末の決断であれば、そのリスクも少ないと思ったのでした。
そんなこんなで、無事契約書の取り交わしは終了しました。
我が家を売却登録してから、わずか7日での短期売却に成功しました。
それより何より
「売れなかったらどうしよう〜
」
の不安から開放され、大きな安堵感を得たというのが本音かも知れません。
この後は、新居のことだけを考えて、すなわち前を見て進めばいいのです。
これ以上の喜びはありませんでした。
そして短期間で売れたことによって、大きなメリットを産みました。
ご近所に売却活動がほとんどバレなかったのです。
賃貸マンション向けにチラシのポスティングがされた後、最初の新聞折込チラシが少量配布されただけですので、販売価格を含めてほとんど気付かれずに済みました。ラッキーでした。
でもこんなに早く売れると思わなかったし、大々的にチラシが入ると思ってたので、親しいご近所には
「春に引越しします!」
と布石を打っていました。
その関係で、ご近所のオバさんからは
「この家売れたの? い・く・ら・で???」
の質問がとても多かったことは言うまでもありません。

不動産仲介パートナーのK氏から、緊急呼び出しを受けました。
その内容はもちろん購入希望者に関する打ち合わせです。
驚いたことにK氏は、その購入希望者からすでに不動産購入申込書をとっていました。
ややフライング気味かも知れませんが、私は自分もこういう先手先手を打つタイプの営業マンなので、その段取りの良さは感心していました。
そして、
「いいでしょう。それで行きましょう。2580万で売却お願いします!!!」
「ありがとうございます。買主のSさんも喜びます。Sさんご家族はとても良い方ですよ。私の経験からも、あの家族なら変なクレームは付けてこないと思います。」
「クレーム?」
「たまに居るんですよ。中古物件なので現状有姿でお引渡しと言ってるのに、新築と勘違いされて、あそこが汚い、ここにキズがある・・・など細々言ってくる人たちが。。。中古物件の場合は特にそういう点に気を使います。」
「ふ〜ん」
「ですので、中古物件の取引の場合は、我々も買主をよく見極める必要があります。今回のSさんは、今日一日ずっと一緒に居ましたが、真摯な家族でした。それにクロス張替とハウスクリーニング程度の簡単なリフォームをされる予定ですので、その点は大丈夫でしょう。」
「そうですか。。。」
「いやぁ、それにしてもリックルハングさん、最初の売り出し価格が良かったと思いますよ。私が売主だったとしても2650万付近の価格を付けていたと思います。よく研究しておられましたもんね。」
「そうですか??ありがとうございます。」
そして次の週末。
日は大安吉日。契約の日を迎えました。
私自身初めて、買主のSさんと対面します。
「奥様が仕切ってると聞いているので、ご夫婦で来られるのかな?」
とても緊張しましたが、予想に反して契約に来られたのは、Sさんご主人一人。
少しホッ・・・
Sさんは予想通り、パッと見はとてもマジメそうで、やさしそうな感じでした。
不動産取引での契約経験はこれで4回目です。
1回目は今売ろうとしているこの家の購入。
2回目は新居の土地購入。
3回目は先日行われたばかりの新居の建物契約。
仕事で契約をもらうときは何とも思わないのに、いざ自分が契約者側に立つと、何度経験しても、この契約調印というヤツは緊張するなぁ
